教育支援プロジェクト・自然体験学校報告

ボランティアの輪を!

8月7日(日)から9日(火)にかけて、猪苗代町の磐梯青少年交流の家において、人間発達文化学類「自然体験学校」が開催されました。

この催し物は、本学類が主に1年生に対して開講されている「自然体験実習」の本番と言えるものです。今年で15回目を迎えますが、大震災の起きた今年度は学類の「東日本大震災学校支援プロジェクト」として被災した子どもの支援プログラムの一貫として行われました。

しかし、今年は震災で大学が始まるのが例年より1ヶ月遅く、通常「100日かけて3日間の行事をつくる」というキャッチフレーズも、70日間で100日分の準備を行わざるを得ないと書き換えなければならない状況、しかも学生自身が多かれ少なかれ被災者であり、なによりこれまで14年間踏襲してきたやり方をかなり変えざるを得ないという、三重苦の中での準備・運営となりました。

今年のテーマは「僕らは輝きさがし隊 〜照らしだそう笑顔のみち」というもので、子どもたちの震災からの復興を強く意識したものになっています。

1年生78名、2年生24名(過年度受講生)、子ども114名(小学5年生~中学3年生)、指導教員6名の構成で、本番を迎えました。

例年だったら大学に子どもたちが集合し、バスで磐梯青少年交流の家に向かうのですが、今年は福島方面、郡山方面、川俣・二本松方面に分け、学生のバスを含めた4台が現地で合流するという、異例の始まりとなりました。

開校行事では、学生たちは子どもたちをリラックスさせようと工夫を凝らし、3日間の過ごし方、3日間の目標、3日間を彩る冒険の数々について楽しく紹介されました。

午後は集団創作活動で、カラービニールを使って大きなものをつくるというのは例年と同じでしたが、今年は自分たちの願いを実現させる象徴として巨人を10班それぞれ1体つくり、さらにそれらに手をつながせて輪をつくり、光らせるという、感動的な活動となりました。ここまで構想をまとめるのに何度も何度も試作と修正を重ねてきたスタッフは、涙ながらに感動していました。

その夜はテントに泊まり、朝からハイキングが始まります。

老いぼれた「森の精霊」が登場して、宝物の花びらを見つけてくれというお願いを子どもたちにします。

10の班はクイズやゲームに挑戦しながら、花びらを獲得していきます。猪苗代湖を一望できる広場で、宝物の花が完成するという、一体感と到達感を味わうことができました。

帰るとすぐに、マイ切りを使った「火起こし」に、「野外炊飯」でカレーの調理を行い、学生と子どもの間で友情を育んでいきます。

そして2日目のメインイベントとなるキャンプファイヤーが始まります。
厳粛な雰囲気で中央に点火され、司会の二人の楽しいトークでイベントは展開してきます。各班で時間のない中で考えたスタンツも披露され、友情が確認されてキャンプファイヤーの火は消えていきます。

最終日は朝から文集づくりが始まります。
学生のていねいな指導のもとでプロフィールを書いたり、作文を書くためのメモをつくり、作文を書いていきます。
日頃、あまり作文を得意としない子どもたちも、一生懸命3日間の思い出を文章にまとめていきます。
できあがった作文は班ごとにまとめられ、後日完成した文集が各家庭に届けられることになります。

いよいよ最後は閉校行事です。
班長からのメッセージとともに修了証書が子どもたちに手渡され、3日間の思い出が映像とともに紹介され、楽しく充実した日々をふり返ります。
美しい光を放つ星が登場し、「輝き探し隊」の秘密が解き明かされます。「探し隊」の隊長さん(学生)から、子どもたちへ「これからも輝きを見つけてもらいたい」というメッセージが読み上げられます。

校歌とともに会は終了と思いきや、指導に当たった先生から3ヶ月の学生たちのがんばりを讃えるエンドロールも披露され、感動に包まれました。

すべてのセレモニーの後は会場を変えて、10の班ごとのお別れ会が始まります。
一人ひとりに修了証書が手渡されます。これらはすべて、前日の夜学生たちが徹夜して書いた一人ひとりへのメッセージが刻まれています。子どもたちも感動し、学生とともに涙を流して別れを惜しみます。

学生と子どもたちで全員で記念撮影をし、子どもたちは郡山へ、二本松・川俣へ、福島へとバスに分乗し、手を振って別れを告げます。

この間、ずっと避難所をまわっていた私にとっては、屈託のない子どもたちの笑顔に深く感銘を覚えました。

そして、あの悲惨な生活をしていた子どもたちが、仮に一時でもこのように学生や子ども同士の人間的な時間を過ごすことができ、光の巨人をつくったり、宝物の花を咲かせたり、輝く星を見たりしながら、元気に前に進んでいこうという希望を得ることができたとするなら、私たちはこの上ない満足を得ることになるでしょう。

主観的であるには違いありませんが、15年間の「自然体験学校」のなかで、もっとも大きな感動を得たイベントとなり、15年の歴史に新しい花を添えるものとなりました。

約100人の学生が70日間かけて企画を作り上げ、114名の子どもたちを3日間だけ支援した、といえばそれまでですが、内容についても質についても、最高レベルの子ども支援事業になったと自負しています。極めて困難な状況の中で大学に入学し、異例ずくめの中で企画を作り上げ、やり遂げた1年生、そしてそれを支え続けた2年生の学生たちに敬意を表します。

なお、本事業の詳細につきましては、こちらのページを参照下さい。

« »